七河迦南『アルバトロスは羽ばたかない』読みました。
少し前に読んで、ブログにも載せた『七つの海を照らす星』の続編にあたる作品です。
主人公は保育士の北沢春菜で、海の近くの町にある児童養護施設七海学園の職員。慌ただしい毎日が続くが、ある冬、施設の児童が通う高校の文化祭で、校舎の屋上からの転落事件が起きる。
警察は事故だろうと言うが、その文化祭の前、春~夏~秋に春菜が経験した4つの事件に、文化祭の事故の真相を知るための重要な手がかりが隠されていた・・。
というわけで、章立てとしては、春、夏、初秋、晩秋の4つの事件の章の間に、メインの文化祭の転落事件の章(冬の章)が少しづつ入っていくという構成になっている。過去を辿って順番に解きほぐしていく感じだ。
相変わらず私は短編が苦手なので、大丈夫かな・・と思っていたが、結論から言うと、
「「「まだ読んだことの無い人は、前作『七つの海を照らす星』と本作『アルバトロスは羽ばたかない』を両方用意し、1作目から順番に読んでください。絶対読んでください。」」」
すごすぎた。
とんでもなさすぎた。
読んで。
お気に入り度★★★★★★★★★☆
※以下ネタバレします。
まあ屋上に上がった3人が犯人では無さそうってのはなんとなく察せる。
眼鏡をしてなかったのに遠くから屋上に瞭がいることがわかった茜が怪しい!と思わせて違う。
瞭という名前だけでは男か女か判別もつかないのに断定した高村くんが怪しい!と思わせて違う。
じゃあ誰なんだ!もういいや結末を見よう。
と思って372ページの傍線を見る。
ん?
正直何言ってるか解らなかった。
でもなんかすごい感覚が込みあげてきて、しばらくして、前のページの冬の章を何か所かめくって、ようやくその意味が解ってきた、という感じだった。
いやあ久しぶりに世界がひっくり返った。
前作のときも、本当に違和感なく、何十か所も伏線をちりばめる技術というか、さりげなさがすごいなあと思っていたけれども、それを上回って巧すぎた。
これは解説にも書かれていたが、伏線としては隠れていても、あれ?そんな伏線あった?というふうに埋もれてしまうことは決してないのである。その点もすごい。
本当よかった。ありがとうございました。
最後を読むまで、空耳の森はどうしようかなあと思っていた(ごめん)けど、次も読みます。
ところで春菜は大丈夫なんだろうか。シリーズ次回作はあるのだろうか。これだけのものを書くからかまだ著作が4作しかないみたいなので気になるが、待ち遠しい限りだ。
さしあたっては、今から冬の章を全部読み直してこようと思う。
お気に入り度★★★★★★★★★☆
先月ブログ開設して以降のベスト。こういうのに出会いたいから読んでいる。