小説の感想とか(仮

読んだ本の感想を中心に、日常、映画、漫画、アニメ、ゲーム等々面白かったものに振れます。※ネタバレ注意

市川憂人『ジェリーフィッシュは凍らない』読みました。

 

 

 

第26回鮎川哲也賞

新型気嚢式浮遊艇ジェリーフィッシュの航行試験のために乗り込んだ男女6人。

空の旅は順調に進んでいたと思われたが次々に乗組員が死んでいき・・。

最終的には6人全員が死んだ状態で発見された。犯人は一体誰なのか。

という、そして誰もいなくなる感じのストーリー。

 

まず章立てが好き。

実際の浮遊艇の出来事をリアルタイムに描写した「ジェリーフィッシュ」の章

事件の全てが終わった後に、警察が捜査を進めていく「地上」の章

犯人と思われる人物の独白が綴られる「インタールード」の章

これが交互に続く。事件中、事件後、事件前を読者は行ったり来たりする。

なんというか「島」と「本土」を思い出してしまった。

 

この章立て、いわば読者が最も情報を与えられている立場であるのだが、真相にはなかなか手が届かない。根幹の真相が明かされたとき、最初はそれほど感動しなかったのだが、後から見返してみた時に、あーここのシーンのこの書き方はすごい、こうやって通すのか、という描写が散りばめられていてじわじわと解っていく感覚がよかった。

 

 

※※※以下ネタバレかも

 

 

さっき、真相にはなかなか手が届かないとは書いたものの、実は犯人については割と簡単に予想がついた。

プロローグで「私自身をこの雪の牢獄から消し去るだけだ」とあって、犯人は中に居て、今は脱出している人物。動機はレベッカの事件で、搭乗者の中で、レベッカと関係ないと思われている人物が犯人の可能性が高い。

死体の1つはバラバラ死体(頭部が無いというネタではなかったが。)になっている。

この死体が恐らく犯人と入れ替わって殺された人物。

インタールードに出てくるサイモンという男が出てくる。

まあこの辺から予想できた。

 

ただこの話のメインの仕掛けはまあ全然別のところにあったんだけど。

比較対照実験かー。前半部分を読んでいても全然気づかなかった。

犯人の名前が結局明かされないというのも新しい。私はたぶん読んだことが無い。

まあ強いていうなら冒頭の計画書は「どこ用のものなのか」ということくらいかな。

 

面白かったです。17年の受賞作より個人的にはこっちのほうが好きかも。

お気に入り度★★★★★★★★☆☆

 

ところで最近、記事の冒頭のあらすじみたいに書いてある部分が面倒くさくなってきて、例えばいきなり「この伏線がなー」とか言い始めてもいいのではという気分に。

かといって精密な考察が披露できるわけでもないので迷っている。布教の方向に行くべきか。自分自身がストーリーをひたすら味わうことに集中すべきか。うーん